- 便潜血と血便・下血
- 血便の色・見た目は?
- 心配のいらない血便・下血はない?
- 血便・下血の原因となる病気
- 便潜血陽性が出たら大腸カメラを受けましょう
- このような症状がある場合には消化器内科までご相談ください
便潜血と血便・下血
「便潜血」とは
便潜血とは、肉眼では確認できない微量の出血です。便潜血検査とは、主に大腸がんのスクリーニング検査として用いられます。この検査では、肉眼ではわからない3〜5mlといった少量の出血でも検出可能で、特に初期の大腸がんのように、症状が現れにくい場合の早期発見に役立ちます。
「血便」とは
血便とは、便に血液が混じっている状態であり、便器が真っ赤になるほどの大量出血から、肉眼では出血が確認できないものまで幅広く含まれます。消化管の出血や痔が原因であることが多いです。出血が上部消化管からのものであれば、便は黒色に変わりますが、下部消化管からの出血では赤色の便が見られます。
また、血便は、下痢や便秘、発熱、痛み、嘔吐、残便感など他の症状と共に現れることがあり、重篤な疾患の兆候である可能性があるため、注意が必要です。
ご来院いただいた際には、便の特徴や排便の状態をお伝えいただくと、よりスムーズに診断できます。
「下血」とは
「下血」とは、食道、胃、十二指腸などの上部消化管からの出血が肛門を通じて排泄される現象、またはそのような血液が混じった便のことを指します。多くの場合、黒色便やタール便として見られ、色合いから血液が混じっていることに気付かれないケースもあります。
血便の色・見た目は?
血便は主に「黒色便(タール便)」と「鮮血便」に分類されます。これらの中間に位置するのが「暗赤色便」で、黒と赤が混ざった色をしています。さらに、血液と粘液が混ざり合った「粘血便」もあります。
鮮血便
鮮血便は、小腸や大腸からの出血が原因で起こる血便です。出血箇所が肛門に近いほど、血の色が鮮明になります。これは血液中の鉄分が酸化する前に排出されるためです。肛門近くの大腸部分、特に直腸やS状結腸から出血しているサインとなりますが、食道や胃、小腸からの大量出血の場合も、速やかに排出されると新鮮な血液として見られることがありますので注意が必要です。
痔や裂肛、直腸がん、直腸ポリープ、潰瘍性大腸炎、直腸潰瘍などを発症している可能性があります。
暗赤色便
暗赤色便は、出血後に時間が経過し、暗い赤色をしている便です。この色合いは、大腸の上部や小腸からの出血が原因であることを示唆しています。
大腸がんや大腸ポリープ、虚血性腸炎、感染性腸炎、潰瘍性大腸炎、クローン病、大腸憩室出血、小腸潰瘍、メッケル憩室出血などの発症が疑われます。
粘血便
粘血便は、血液と粘液が混ざり合った、ドロドロした便です。主に大腸粘膜の炎症によって起こり、潰瘍性大腸炎、クローン病、感染性腸炎などの発症が疑われます。
黒色便(タール便)
黒色便は、主に上部消化管の出血が原因で、血液中の鉄分が胃酸と反応し酸化することで黒くなります。黒色便が出た場合は、胃カメラ検査を行います。
ただし、小腸末端や盲腸・上行結腸からの出血も、時間が経つと黒色便を引き起こす可能性があり、大腸カメラでの検査が必要になる可能性もあります。また、鉄剤の服用によっても黒色便が現れることがあるため、服用している方はお申し出ください。
黒色便の原因としては、胃潰瘍、胃がん、胃ポリープ、十二指腸潰瘍、十二指腸がん、十二指腸ポリープ、食道がん、逆流性食道炎、食道静脈瘤破裂などが挙げられます。また、鼻出血や口腔内出血、喀血など他の出血源からも黒色便が生じることがあります。
心配のいらない血便・
下血はない?
血便や下血の特徴から出血源を予測することはある程度できますが、病気の種類や重さを判断するのは、医師が直接便を見ても難しいものです。そのため、安心してよい血便というものは原則として存在しません。症状が見られた際はすぐにご相談ください。
ただし、多忙によりすぐに受診するのが難しい方もいらっしゃるかと思います。そのためここでは、一旦様子を見ても問題ない状況についてご紹介します。
- 硬い便による肛門の小さな裂傷
- 軽い痔の治療を受けている途中で、僅かな出血が見られた
- 軽度の食中毒にかかった
- 抗生物質を服用した後の血便
血便・下血の原因となる病気
血便は痔から生じることが多いとされていますが、大腸がんをはじめとする深刻な病気の兆候である可能性もあります。潰瘍性大腸炎やクローン病などの疾患も血便を引き起こすことがあり、これらは近年増加しています。
一時的な出血は自然に治まることもありますが、病気が原因の場合は、適切な診断と治療が必要です。特に、がんなどの重篤な病気が背景にある場合がありますので、血便が見られたら、他の症状の有無に関わらず、ぜひ当院へご相談ください。
特に、腹痛や吐き気、嘔吐、発熱などの症状が伴う場合、放置は禁物です。
血便の場合
大腸ポリープ
大腸ポリープは、便との摩擦による出血で血便の原因となることがあります。ポリープのサイズが小さい場合は無症状ですが、成長すると出血しやすくなります。一部のポリープはがん化するリスクがあるため、内視鏡検査で発見された場合は、日帰り手術で切除し、将来の大腸がんを予防しましょう。大腸ポリープは早期に発見し治療することが重要です。
大腸がん
大腸がんは初期には自覚症状がほとんどなく、進行すると便の摩擦による血便や持続的な出血が見られるようになります。これはがん組織が壊れやすく、血管を集めやすい性質を持つためです。
進行がんでは、血便、便秘、下痢、便の細さ、腹部の張りなどの症状が現れ、便潜血検査で陽性が出た場合は、大腸カメラ検査が必要になります。
また、大腸がんは粘膜から発生し、リンパ液や血液を通じて他の臓器に転移する可能性があります。
潰瘍性大腸炎
潰瘍性大腸炎は、クローン病と共に難病に指定されており、原因はまだ明らかではありません。ただし、患者数は年々増えつつあります。この疾患は大腸の粘膜にびらんや潰瘍を引き起こし、粘血便や慢性的な腹痛、下痢などの症状が特徴です。また、潰瘍性大腸炎はがんへ進行するリスクもあります。
虚血性腸炎
虚血性腸炎は、便秘時の強いいきみや動脈硬化による血管狭窄・閉塞により、大腸の血流が不足し、炎症や壊死を引き起こして血便が生じる病気です。主に左下腹部に痛みがあり、軽度の場合は安静により改善が見込まれますが、重症の場合は手術が必要になることもあります。下痢などで大腸の運動が活発になると血流障害が起こり、大腸粘膜に潰瘍が形成されて血便と腹痛が生じます。
感染性腸炎
病原性のウイルスや細菌が口から体内に入り込むと、腸の粘膜に炎症が生じます。これにより、軽度の下痢や嘔吐から血便や激しい腹痛に至るまで、さまざまな症状が発生することがあります。下痢の回数が多くなるため、脱水症状に陥るリスクが高まります。
憩室出血
大腸の壁に形成される袋状の憩室から、出血が起こる状態です。通常は無症状ですが、憩室の薄い血管が破れると出血し、血便を起こします。
多くは安静によって自然に止血しますが、出血が長期間続いたり出血量が多くなったりした場合は、内視鏡による止血処置や手術が必要です。出血は赤から暗赤色の血便として現れ、繰り返すことがあり、入院治療が必要になるケースもあります。
痔
痔は、便秘や下痢がきっかけで発症する病気です。いぼ痔や切れ痔による出血、肛門の痛み、腫れ、かゆみなどの症状が現れます。治療は症状の程度に応じて、軟膏や坐薬、手術、注射治療などを行います。放置すると症状が悪化するため、早めに治療を受けるようにしましょう。
下血の場合
逆流性食道炎
逆流性食道炎は、加齢による下部食道括約筋の緩み、姿勢の問題や衣服の圧迫による腹圧の上昇、あるいは薬剤の影響などにより胃酸が食道に逆流し、食道の粘膜を損傷する病気です。げっぷ、胃の痛み、胸焼け、胸の痛み、咳、喉の痛み、声のかすれ、そして下血などの症状を引き起こすことがあります。
食道がん
食道がんは、飲酒と喫煙によって発症するがんです。このがんは、食べ物を飲み込む際の喉の違和感や痛み、食べ物が詰まったような感覚、背中や胸の痛み、声のかすれ、体重の減少、そして下血などの症状を引き起こすことがあります。
食道静脈瘤破裂
食道静脈瘤は、食道の粘膜下を走る静脈が瘤状に拡張する状態です。これが破裂することを食道静脈瘤破裂と呼びます。
静脈瘤自体は症状を引き起こさないことが多いですが、肝硬変などの根本的な原因により、手の平の赤みや胸の血管の浮き出る症状、疲れやすさ、黄疸などが現れることがあります。静脈瘤が破裂すると、吐血や下血を引き起こし、場合によっては生命を脅かす大量出血に繋がることもあります。
胃がん
胃がんは、胃の内側の粘膜に発生するがんです。初期段階では症状がほとんどないケースが多いのですが、がんが成長し進行すると、胃部やみぞおちの痛み、食欲不振、吐き気、そして黒色便やタール便といった症状が出始めることがあります。
胃潰瘍・十二指腸潰瘍
胃潰瘍と十二指腸潰瘍は、胃酸によって胃や十二指腸の粘膜が損傷し、深い傷が生じる病気です。主な症状には、みぞおちの痛み、胸焼け、吐き気、食欲不振、そして黒色便や吐血があります。ストレスやピロリ菌感染、薬剤の副作用、刺激物の過剰摂取などが原因で発生します。出血が続くと貧血や穿孔のリスクが高まります。
胃過形成性ポリープ
胃ポリープには、「胃底腺ポリープ」と「胃過形成性ポリープ」の2種類があります。特に胃過形成性ポリープはがん化するリスクがあり、出血が見られた場合には下血として認識されることがあります。
便潜血陽性が出たら大腸カメラを受けましょう
診察では、血便の特徴、他の症状、過去の病歴、服用中の薬などについてお伺いし、必要に応じて検査を実施して診断をつけます。患者様の状態やお悩みを丁寧に把握した上で、適切な検査を進めますので、安心してご相談ください。
触診・診察
触診では、患者様が横になった状態で麻酔を使用し、痛みを最小限に抑えます。肛門鏡検査により、痔核や裂孔の状態を評価し、患者様の希望に合わせた治療計画を立てます。
当院では、患者様のプライバシーと快適さを重視しており、痛みの少ない検査と治療を心がけています。
胃カメラ検査
食道や胃・十二指腸からの出血が疑われる場合、胃カメラ検査を通じて粘膜の詳細な観察と組織採取を行います。検査中に、出血部位の止血処置を行うことも可能です。
経鼻または経口の方法をお選びいただき、鎮静剤を用いた快適な検査環境を心がけています。土曜日の検査にも対応していますので、お気軽にお問い合わせください。
大腸カメラ検査
大腸カメラ検査は、大腸がんや潰瘍性大腸炎、クローン病などの疾患を発見し、確定診断するために役立つ検査です。検査では止血処置や組織採取も行い、痔核や裂孔以外の出血源を見つけ出します。
小腸出血の疑いがある場合は、専門医療機関への紹介も可能です。検査は麻酔を使用して痛みを最小限に抑え、必要に応じてポリープの切除も行います。
このような症状がある場合には
消化器内科までご相談ください
血便や下血は、胃がんや大腸がんのサインとして起こっている可能性があるため、これらの症状が見られた際には、検査を受けて状態を確認しましょう。
痔を持っている方は、「出血=痔によるもの」だと考えがちですが、大腸がんを含む他の疾患が存在する可能性もあります。
病気が進行する前に見つけるために、そして適切な診断と治療を受けるためにも、血便や下血が1回でも発生した場合はぜひ、当院へ受診してください。
- 便に血液が混ざっている
- 便が黒い
- 排便後のトイレットペーパーに血がついている
- 便秘と下痢が交互に起こる
- 排便後も便が残っているように感じる
- 便に粘液がついている
- 便の形状が細くなっている
- お腹が痛い