- ピロリ菌(ヘリコバクター・ピロリ)とは
- ピロリ菌はうつる?感染経路は?
- ピロリ菌感染で症状はある?
- ピロリ菌の検査方法
- ピロリ菌の治療方法(除菌)
- ピロリ菌検査・除菌の費用
- ピロリ菌検査・除菌のよくある質問
ピロリ菌
(ヘリコバクター・ピロリ)とは
ピロリ菌は、主に乳幼児期に口から感染し、胃の粘膜に定着して慢性胃炎や胃・十二指腸潰瘍、さらには胃がんのリスクを高める細菌です。日本では、30~50代の約30%、2000万~3500万人が感染しており、そのうちの感染者の約3%が10年以内に胃がんを発症する可能性があるとされています。抗生物質による治療で感染者の約90 %が除菌に成功し、胃がんへの進行リスクを減少させることができています。特に若いうちに除菌することで、その効果はより大きくなります。
胃の不調を感じる方や家族にピロリ菌陽性者がいる方はもちろん、胃がんの早期発見と予防のためもぜひ、ご相談ください。
ピロリ菌はうつる?感染経路は?
ピロリ菌の感染経路について、まだはっきりとは明らかになっていませんが、井戸水や食事の口移しなどの経口感染が主な感染経路とされています。
ピロリ菌は基本的に5歳以下の幼児期に感染し、成人になってからの新規感染は稀です。そのため、衛生環境が整っていなかった時代に幼少期を過ごした現在の50歳以上の感染率は70%を超えると推測されています。ピロリ菌感染が必ずしも胃がんや胃潰瘍を引き起こすわけではありませんが、除菌治療によりこれらの病気の発生リスクを減らすことができます。
ピロリ菌感染で症状はある?
ピロリ菌感染自体には自覚症状がほとんどありませんが、多くの場合、慢性胃炎を引き起こします。しかし、この胃炎は通常、症状を伴いません。
ピロリ菌感染が原因で胃・十二指腸潰瘍や胃がんを発症すると、腹痛、腹部膨満感、食欲不振、体重減少などの症状が現れることがあります。胃潰瘍や十二指腸潰瘍では、特に食後や空腹時にみぞおち周辺の痛みがみられることがあります。胃がんでは、腹痛、早期満腹感、嘔吐、体重減少、貧血などの症状が現れることがあります。
胃の不調が必ずしも病気を意味するわけではありませんが、症状がないからといって病気が進行していないとは限りません。
ピロリ菌の検査方法
尿素呼気試験
ピロリ菌が生成するウレアーゼは、尿素を分解して二酸化炭素とアンモニアに変える性質があります。尿素呼気検査は、この特性を活用した検査です。患者様に特別な尿素溶液を飲んでいただき、飲む前と飲んだ後の呼気を採取して分析します。患者様への負担が少なく、迅速かつ正確に結果を出すことができる検査です。
血中・尿中抗体測定(血液検査)
ピロリ菌に感染すると体内でIgG抗体が生成されます。血液検査により血液中の抗ピロリ菌IgG抗体を検出し、感染の有無を判断する検査です。
便中抗原測定
便検査によりピロリ菌の抗原を検出し、感染しているかどうかを判断する検査です。
ピロリ菌の治療方法(除菌)
ピロリ菌の除菌治療では、いくつかの薬剤を組み合わせて使用します。初回の除菌治療は「一次除菌」と言い、これによって患者様の約90%は除菌に成功します。
一次除菌で失敗した場合は、「二次除菌」と呼ばれる2回目の治療を行います。二次除菌を受けた患者様の成功率は約90%です。一次と二次の除菌を合わせると、患者様全体の約98%は除菌に成功していることから、除菌治療は非常に効果の高い治療と言えます。
一次除菌
ピロリ菌の除菌治療には、胃酸分泌抑制薬と2種類の抗生物質を含む3種類の薬を1日2回、7日間服用します。
これらの抗生物質は一般的な感染症にも使用され、比較的副作用が少ないとされています。治療期間から8週間後に再検査を行い、除菌に成功したかチェックします。
二次除菌
一次除菌に成功しなかった場合には、二次除菌を行います。この場合でも、胃酸分泌抑制薬と2種類の抗生物質を使用しますが、抗生物質は1種類のみ、処方を変更して7日間服用します。この治療は保険診療で行われ、8週間後に検査をして除菌の成否を判定します。もし二次除菌でも除菌が不成功の場合、三次除菌が行われますが、これは自費診療となります。
ピロリ菌検査・除菌の費用
保険診療の場合
内視鏡検査で慢性胃炎、胃潰瘍、十二指腸潰瘍と診断された方、または早期胃がんの治療を受けた方は、ピロリ菌の検査および除菌治療が健康保険の対象となります。
1割負担 | 2割負担 | 3割負担 | |
ピロリ菌検査+除菌治療 | 約1,500~2,000円 | 約3,000~4,000円 | 5,000~6,000円 |
※目安金額です。
自費診療の場合
ピロリ菌検査 | 尿素呼気試験(呼気検査) | 円 | |
---|---|---|---|
血中抗ピロリ菌抗体測定(採血) | 円 | ||
尿中抗ピロリ菌抗体測定(尿検査) | 円 | ||
便中ピロリ菌抗原測定(便検査) | 円 | ||
除菌治療 | 円 |
ピロリ菌検査・除菌の
よくある質問
ピロリ菌検査を受けた方がいいのはどんな人でしょうか?
特に、以下の条件に当てはまる方はピロリ菌検査を受けるのが望ましいです。
- 血縁者に胃がんまたはピロリ菌感染者がいる場合:家族内感染の可能性があるため
- ピロリ菌の除菌治療後、除菌の成否をチェックする検査を受けていない場合:除菌が完全に成功したかを確認する必要があるため
- 30歳以上で過去に胃カメラ検査やピロリ菌検査を受けたことがない場合:早期発見により胃がんリスクを軽減できるため
ピロリ菌は主に幼少期に経口感染し、感染経路は汚染された水や感染者の唾液を介しています。除菌治療は100%の成功率ではないため、治療後は必ず除菌の成否を確認することが重要です。胃カメラ検査により、ピロリ菌感染の有無を推定でき、若いうちに除菌を行うことで、胃がんのリスクを大幅に下げることができます。 胃の不調がなくても、一度は胃カメラ検査を受け、必要に応じて治療を受けるようにしましょう。
ピロリ菌の除菌成功率を上げるためにできることはありますか?
一次除菌治療のみでの成功率は約90%であり、一次と二次の治療を組み合わせることで、除菌成功率は98%以上に達するとされています。
アルコールとタバコは胃酸の分泌を増加させるため、除菌治療の効果を高めるためにも、治療期間中は禁煙・禁酒を徹底するように心がけましょう。
ピロリ菌は必ず除菌する必要がありますか?
ピロリ菌の除菌は、潰瘍を繰り返す方には勧められますが、全ての方に必須ではありません。除菌治療による副作用がある場合や、繰り返し治療しても成功しない場合は、胃酸分泌抑制剤の継続治療が選択されることもあります。
ただし、ピロリ菌感染が続くと胃がんを含む胃疾患のリスクが高まるため、定期的な胃の検査を受けることが望ましいです。
なぜピロリ菌の除菌治療前に内視鏡検査が必要なのですか?
ピロリ菌感染は慢性活動性胃炎を引き起こすため、胃がんを含むピロリ関連疾患が存在する可能性があります。
特に、胃がんの発生率が高い日本では、除菌治療前に胃がんの有無を確認するため、内視鏡検査が推奨されています。