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感染症胃腸炎(ウイルス性胃腸炎・細菌性胃腸炎)

胃腸炎は人から人へうつる?

胃腸炎は多様な原因(食品、薬剤、ストレスなど)によって引き起こされますが、中でもウイルスや細菌による感染性胃腸炎が多く見られます。
このタイプの胃腸炎は周囲に感染が拡がる危険性があるだけでなく、重症化する可能性もあるため、症状が現れた際には速やかに当院へ受診してください。

胃腸炎の原因

胃腸炎は、食品やウイルス、細菌、ストレス、生活習慣など多岐にわたる原因で発生する病気で、特に感染性胃腸炎が多く見られます。
感染性胃腸炎は、ノロウイルスやロタウイルス、アデノウイルス、新型コロナウイルスなどのウイルス、サルモネラやカンピロバクター、黄色ブドウ球菌などの細菌、そしてアニサキスなどの寄生虫によって引き起こされる感染症です。感染経路は、汚染された水の摂取、加熱が不十分な食品の摂取、感染者の吐物や糞口からの感染、不衛生な食器の共有など、多岐にわたります。

胃腸炎の症状

  • 発熱:ウイルス性は37度台、細菌性は38度に達することもあります
  • 下痢:ウイルス性の場合は水様便が特徴です。細菌性は頻繁にトイレに行くこともあります
  • 吐き気・嘔吐:食べ物や胃液が主で、油分の多い食事で悪化することもあります
  • 腹痛:波のある痛みが特徴です。持続的な痛みは他の疾患の可能性が疑われます

上記のような症状が代表的です。症状の進行は通常「吐き気 → 発熱や腹痛 → 下痢」の順をたどりますが、病原体によっては発熱から始まることもあります。
小さな子供の場合はけいれんを起こすこともあります。ウイルス性胃腸炎は5~7日で自然に回復することが多いですが、「嘔吐が2日以上続く」「下痢が数日以上続く」「血便が見られる」「高熱が出る」「腹痛の性状に変化がある」「意識障害や失神が起こる」といった症状が見られる場合は早急に当院へ受診してください。

胃腸炎の潜伏期間・
回復までの目安

ウイルス性胃腸炎

ウイルス性胃腸炎は、ノロウイルスやロタウイルス、アデノウイルスなどのウイルスが原因で発生する感染症です。ウイルス性は、感染性胃腸炎全体の約90%を占めており、感染したウイルスの種類によって症状の強さ、回復期間、潜伏期間が変わります。

ノロウイルス

主な症状として、吐き気、嘔吐、下痢、腹痛、発熱があり、通常3日ほどで回復することが多いです。感染源としては、特にカキなどの二枚貝が挙げられます。また感染者が触れた物品や嘔吐物、便からも感染するリスクもあります。潜伏期間は1~2日で、流行は主に冬季の11月~3月にかけて見られます。

ロタウイルス

ロタウイルスによる感染性胃腸炎では、主に吐き気や嘔吐、発熱、腹痛、白く水っぽい下痢といった症状が現れます。通常1~2週間で回復に向かいます。感染は、感染者が触れた物品や嘔吐物、便、さらには汚染された食品や水を介して広がります。潜伏期間は1~4日で、主に2月~5月にかけて流行する傾向が強いです。

アデノウイルス

嘔吐をはじめ、白色から黄色っぽい水様の下痢を特徴としています。感染は、感染者が触れた物品や嘔吐物、便から起こり、通常1~2週間で回復します。潜伏期間は1~3日ですが、アデノウイルスは季節を問わず一年中発生する可能性があります。

サポウイルス

嘔吐や下痢、腹痛、発熱などの症状を引き起こし、通常1~2日で回復します。感染の主な原因は、カキなどの二枚貝や汚染された水、感染者の接触物、嘔吐物、便にあります。潜伏期間は1~2日で、流行は10月~4月にかけて特に多く見られます。

細菌性胃腸炎

細菌性胃腸炎とは、細菌によって引き起こされる胃腸炎です。特に夏の暑い時期に6月から8月にかけて流行する傾向があります。感染性腸炎の中では比較的少なく、全体の約10%未満を占めているとされています。ウイルス性胃腸炎とは異なり、抗菌薬により改善が期待できますが、軽症の場合は薬を使わず自然に治るまで待つこともあります。

カンピロバクター

腹痛、下痢、発熱、倦怠感、頭痛、筋肉痛といった症状を引き起こし、大体3日~6日で回復します。感染の原因となるのは、生食される鶏肉や十分に加熱されていない鶏肉、生野菜、消毒されていない井戸水などです。潜伏期間は1日~7日です。

サルモネラ菌

腹痛、下痢、吐き気、嘔吐、38℃を超える発熱などの症状を引き起こし、大抵2日から7日で回復します。感染は主に卵やその加工品、鶏肉やその他の食肉製品、鰻やスッポンなどを通じて起こります。症状が現れるまでの潜伏期間は6時間~3日間です。

出血性大腸炎(O-157)

出血性大腸炎(O-157)は、腹痛、下痢、血便といった症状を引き起こす細菌です。感染後通常約10日で回復する傾向にあります。感染源は牛肉やその加工品、井戸水、生野菜、漬物などで、潜伏期間は4日~8日です。

腸炎ビブリオ

主に海産の魚介類を通じて人に感染し、強い腹痛、下痢、発熱、吐き気や嘔吐などの症状を引き起こします。感染後は通常2日~5日で回復することが多く、感染源は生食される魚介類や、感染者の手や調理器具からの二次感染です。潜伏期間は8時間~1日と比較的短いです。

黄色ブドウ球菌

吐き気や嘔吐、下痢といった症状が現れ、通常は1~2日で回復します。感染の原因となる食品には、握り寿司やおにぎり、肉類、卵、乳製品、菓子などがあり、潜伏期間は30分~6時間と非常に短いです。

胃腸炎の検査

胃腸炎の検査胃腸炎の原因は多岐にわたり、それぞれの原因に応じた治療が必要です。そのため問診にて、患者様の症状や最近の食事内容、地域の流行状況、海外旅行歴、服用している薬などの情報をお伺いし、以下の検査を行うことがあります。

  • ウイルス性胃腸炎:抗原検査を使用して迅速に診断
  • 細菌性胃腸炎:血液検査で炎症反応や白血球数をチェック
  • 寄生虫による胃腸炎:糞便検査で寄生虫や細菌の有無を調べる
  • その他の疑い(例:アニサキス):内視鏡検査で胃の内部状態を確認

なお、検査結果が出るまでに時間がかかるものもあります。そのため、患者様の症状や地域の流行状況に基づいて感染性胃腸炎と診断される場合、特別な検査をせずに治療を始めることもあります。

胃腸炎を早く治す方法・治療法

感染性胃腸炎の治療には、胃腸の機能を回復させることが中心です。消化に優しい食事を摂り、胃腸を休息させることが基本です。不快な症状がある場合は、以下のような対症療法が行われます。

  • 胃の痛みや不快感:胃酸分泌抑制剤や胃粘膜保護剤を使用
  • 吐き気:制吐薬で吐き気を抑制
  • 腹痛:鎮痙薬で痛みやけいれんを緩和
  • 下痢:整腸剤や止痢薬で下痢を抑制(ただし、重度の下痢に限る)
  • 細菌性感染症:基本は対症療法で行い、必要に応じて抗菌薬を処方する

下痢は病原体の排出に役立つため、重度でない限り、止痢薬の使用は控えます。治療は主に、脱水を防ぎながら自然回復を待つことです。
水分補給は非常に重要で、ウイルス感染の場合は特に有効な治療法がないため、安静を保ちながら自然治癒を待ちます。
水分補給が困難な場合は点滴が必要です。高熱がある場合は解熱鎮痛剤を処方することもあります。下痢症状は病原体の排出に必要なため、下痢止めの使用は慎重に行われます。細菌性腸炎が長引く場合は抗菌薬が処方されることもあります。